だいぶ間延びしてしまいましたが、中国リポートの最終回です。以下、思い浮かぶままに書き連ねてみます。

中国の人件費ですが、天津で聞いたところでは、工場のワーカーレベル(入社1~3年ぐらい)で、だいたい600元から800元というのが月給の相場だそうです。1元=16円として、およそ10,000円から13,000円ぐらいになるでしょうか。元での相場はここ数年変化が無いようですが、為替相場の関係で、日本企業にとっては以前より人件費が上昇しています。

これが職長クラスになるとワーカーの2倍から3倍、管理職で5倍、経営者クラスだと10倍かそれ以上の給与になるようです。(もちろん、各企業によって違いがあります)  それに加え、日系企業であれば日本語、欧米系企業であれば英語(ないしは当該国語)ができれば、プラス要因になります。

ところが、北京や上海の大都市で働く若きエリート層は、今や10,000元は当たり前、職種によっては20,000元ぐらい稼いでいるんだとか。(もっと多い人ももちろんいます)  日本に置き換えれば、20代で月給150万円ぐらいもらってるイメージでしょうか。まあ、そういう人もいるだろうとは思いますが……

いっぽう、最近日本のメディアでも報道されている通り、農村部では一世帯あたりの平均月収が数百元だそうで、確かに貧富の差は拡大しつつあります。

とはいえ、それで政情不安になっているかというとそんなことはなくて、今はとにかく2008年の北京オリンピックとそれに続く2010年の上海万博に向けて、前進あるのみといった雰囲気を感じました。少なくとも現時点では、意欲と基本的な能力さえあれば、稼いで生活を向上できる状況にあるため、不平や不満が表に出てこないようではあります。良く言われるように、これって日本の高度成長期がこんな感じだったのでしょう。

好調な中国経済ではありますが、2010年以降におそらく景気後退局面が訪れるだろうとか、内陸部のイスラム教住民の問題やチベット問題が暴発するとか、その他いろいろと「チャイナ・リスク」が喧伝されてはいます。ただ、中国の潜在的な国力そのものは圧倒的で、各種のリスクを最小限度の被害で乗り切れるならば、やはり世界の大国として君臨しうるポテンシャルがあるという印象を、今回の旅行で強くしました。

日本でいくら「製造業の国内回帰」が謳われても、しょせんは少量多品種の「半端仕事」が中心で、単品の大量生産基地としての中国の優位は揺るがないでしょう。現実に、飛行機にしろ船にしろ、ハブ機能を中国沿岸(天津、上海、広州等)に求める動きが起きているようです。文字通りの「ジャパン・パッシング(Japan Passing)」が起きつつあるわけです。

正直なところ、中国が好景気だろうとなんだろうと、当社には関係ないと思っていたのですが、直接的では無いにせよ、間接的にはやはり影響を受けざるを得ないだろうと感じています。「Think Globally, Act Locally」という言葉がありますが、やっぱりちゃんと世の中のことを勉強し続けていないといけないなぁ…というのが、今回の旅行で得た当たり前過ぎる教訓でした。